好きよりも、キスをして
「別に枝垂坂が大好きってわけじゃないんでしょ?顔を見たら分かるよ。静之はニコニコしてるけど、いつも胡散臭いし。
もし迷惑してるなら言えば?付きまとうなって、枝垂坂に直接言えばいいでしょ?それで澤田に、自分の思いを伝えればいいじゃん」
「!?」
ビックリして、思わず目を開いて反応してしまった。そうか、沼田は……気づいているんだな。俺の想いを。隠している想いを。
だけど沼田、お前は朱音が好きなんだろ?なのに、俺の背中を押してくれるのかよ。優しい奴だな、お前。
でもな、いいんだよ。
「(想いは、伝えない)」
スマホで文字を打つ。そして、すぐに沼田に見せた。その瞬間――沼田の顔に、何本もの青線が入る。
「ねえ、舐めてんの?澤田の行動を見てたら分かるでしょ?澤田も静之の事を好きなの、自分でも分かってるでしょ?
あんたら好き同士なの!なのに、なんで想いを伝えないわけ?俺の事バカにしてる!?」
「(……バカになんて、するわけない)」
暗い顔で答えた俺を見て、沼田は意表を突かれたようだった。まくしたてて喋るのをやめて、冷静に俺を見る。
そして「もしかして」と。
そのよくキレる頭で、俺の悩みを当てにきたのだった。