好きよりも、キスをして
「ひ、ひゃあああああああああぁぁぁぁあ!?」
これが、世に言う火事場の馬鹿力。日ごろ活躍しない私の声は、ここぞという時に本領を発揮してくれた。
叫びながらチラリと見た静之くんは、焦りもせず慌てもせず……ただ鬱陶しそうに私を見ていた。え、あれ……?
「(ここって、アパートだよね?普通こんなに大声出されたら「近隣の迷惑だろ!」とか思わないのかな……?)」
だけどアパートの心配もそこそこに、肺活量の少ない私は、見事に酸欠になる。
「ゴホ!!」とせき込む私を見かねた静之くんが、さっき私にとテーブルに置いた梅ジュースを、わざわざ玄関まで持ってきてくれた。
「変な物は入ってねーから飲めよ」
「(う、疑ってるのがバレてる……)」
急に恥ずかしくなった私。いや、でも……誰だって勘違いするでしょ?こんな状況……。
すると、やっとこの状況を説明してくれる気になったらしい。
静之くんが「お前、色々勘違いしてんだよ」と考える人みたいにおでこに手を当てながら、私を見た。