好きよりも、キスをして
「試しに鳴らしてみようなんて思わないでよ。それ、すっごいうるさくて、届いた初日に警察がウチに来たくらいだから。効果は保証済みだから、安心して頼れば?」
「(沼田……)」
「そういう方法を探らずに逃げてる静之、すげームカつく。不器用すぎ。知らなさすぎ。もっと世間を見なよ。
澤田の守り方なんてごまんとあるから、絶対。手探りで見つけていけばいんだから。
だから、もう澤田を傷つけるな」
「(そうだな、うん……その通りだ。ありがとう、沼田)」
「ふん」
そう言って、颯爽とこの場を後にする沼田。朱音は俺の中から抜け出て、慌てて沼田の傍へ寄った。と言っても、二人の距離はまだ遠い。二メートルはある。
だけど、朱音はそれ以上、近くに寄ろうとはしなかった。その代わり、口を大きく開けて、深く深く息を吸った。
そして、
「沼田くん!ありがとう!!」
今まで一番の大声を、今、だしたのだった。