好きよりも、キスをして
「(そうか、これが恋なんだな)」
恋。好きっていう気持ち。
相手が朱音というだけで、こんなにも満ち足りた気持ちになって、幸せな気分になる。それが、恋。
こんな感情を、俺は今まで知らなかった。人を本気で好きになったのは、今が初めてだった。
「えっと、とりあえず……帰る?」
「(あ、鞄。忘れた、教室に)」
「え、大変じゃん。取りに戻ろう?」
「……いいや」
鞄を置いて帰ると言った俺を見て、朱音はすごく驚いた顔をした。「なんで?」「ないと大変じゃん」「課題はどうすんの?」と、矢継ぎ早にまくしたてる。
だけど、やっぱり「いらない」と返事をする。