好きよりも、キスをして
でも、そこで思いつく。
静之くんは、今のこの状況が「夢だ」と言っていた。夢って起きたら忘れるものでしょ?なら、私の告白の返事も、なかったことになるんじゃ――!?
そう思った時だった。
ブー
橋の上で聞いたブザー音が、また鳴り響く。
それは静之くんにも聞こえているようで「もう朝か」と、特に驚くでもなく、けたたましい音を聞いてもあっけらかんとしていた。そんな静之くんを見て、疑問に思う。
「(静之くんも、このブザー音を聞いた事がある……?)」
聞いてみようか、どうしようか――と迷っていた時。
私の視界は、また暗転する。今の静之くんの部屋は、瞬時に黒に塗り替えられる。
静之くんの姿だけが、闇に浮いて見えていた。