好きよりも、キスをして


「(外でキスしたいときは一瞬ならいいって、前に朱音は言ってくれたけど?)」

「う……、その通りなんだけど……!」



――そ、外で、どうしてもしたくなったら……一瞬で、ちゅって、終わらせて



言った覚えはある、すごくある。だけど、それとこれとは話は違う。

さっき学校でキスして目立ちまくったばかりなのに、今度は外でキスとか。見境なしのバカップルって絶対言われるじゃん。それは、さすがに恥ずかしいから……っ。



「あ、あのさ。なら、もっと人気のない公園とか?寂れた公園にいこうよ。ね?」

「(……却下)」

「ひ、緋色?」



いつになく怖い顔で、緋色は私を見た。そして「よく聞け」と私に念押しをした後に、ポケットの中からある物を取り出した。


それは、さっき沼田くんから貰った防犯ブザー。


静之くんは、それをまるでお守りみたいに大事に握り締めていた。更にスマホを打つ手が、小刻みに震えているように見えた。

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