好きよりも、キスをして


「(俺は声が出ない。もしもお前に何かあった時、人を呼べない。

相手に力で負けた時、お前を助けられない。それが嫌だ。ってか、怖い。お前を守れない自分が怖い。

お前に何かあったら、俺は自分を一生恨む)」

「ひ、緋色……」



そんな大げさな、と言おうとした。けど、言えなかった。

緋色の目が、あまりにも真剣だったから。そして僅かにだけど、恐怖で揺れていたから。



「(緋色……そっか、そうなんだね)」



緋色は、今、私に本音でぶつかってくれているんだ。緋色、ありがとう。

私に弱さを見せてくれて。あなたが本気でぶつかってきてくれるから、私は、今の緋色の思いを知ることが出来る。


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