好きよりも、キスをして
「あ……っ!」
「またなー澤田」
「(ま、またな……って!?)」
別に酸素が薄くなってるわけじゃないのに、闇の中というだけで息がしづらく感じた。
だけど、そんな中でも静之くんは飄々としていて「じゃ」と手を上げて、私とは反対方向へ歩く。
「(そっちに何があるの?ってか、私を置いて行かないで、一人にしないで……!)」
思い切り伸ばした手。だけど次に瞬きをした時は、景色はガラリと変わっていた。見知った景色。落ち着く空間。自分の部屋だと、すぐに理解できた。
今どうやら私は、自分の部屋にいて、自分のベッドで横になっているらしい。
「はぁ、はぁ……」
手は天井へのばしたきり。顔や体には、びっちゃりと汗をかいているのが分かる。久しぶりに酸素を吸うように、深呼吸を何度か繰り返した。
落ち着け、私、落ち着け――
深呼吸を二、三度。終えた所で、少しずつ頭は冷静になる。静之くんの言っていた「ここは夢だ」っていうのは、本当だったらしい。
私は今まで、眠っていたんだ。
だけど……