好きよりも、キスをして
「私は緋色に好きって言ってもらってるよ。緋色がキスをしてくれる度に、私をどう思ってくれてるかが、手に取るように分かる。
だからね、緋色。私にキスをして。
それが緋色の、私への好きの伝え方だから。
緋色が私にキスをしてくれる度に、私は幸せになれるから」
「(朱音……)」
「ふふ」
恥ずかしい事を言っていると分かっている。
だけどね緋色、本当にそう思うんだ。緋色は、私に色んなキスをしてきた。
優しいキス、息も続かないキス、軽く当たっただけのキス――
どのキスにも、そこには緋色の気持ちが織り込まれていた。
緋色、私には伝わってるよ。
あなたの気持ちは、私にたくさん届いてるから。
だから、
「これからも、たくさんキスして。ね?」
「(……ばーか。お安い御用だっての)」
チュッと。
二人の存在を、温度を。きちんと確かめ合うように。
触れ合うだけの長いキスを、私たちは最後の学校生活として締めくくった。