好きよりも、キスをして


「小テスト、勉強したの」



スルーされるだろうなって思ってたら、まさか話しかけてきてくれて。ビックリして、目を見開いて固まってしまった。

だけど返事をするのが遅かったのか「また無言。ウザ」と言われてしまう。昨日と同じく、私の向かってナイフが飛んできた。

今からでも返事をしようかと迷っていると、沼田くんが席を立つ。そして、教室の外へ行ってしまった。



「(あんな短時間で返事しろなんて……沼田くんは、せっかち……)」



だけど――と、さっきの沼田くんを思い出す。



「(話しかけてくれた。私の事、気にしてくれたのかな……?)」



根は悪い人じゃないのかも?と考えを改める。言葉が少しキツイだけで。そもそも、私が喋らないのが悪いんだし。



「(次はもっと早く喋ってみようか。そうしたら、謝れるかもしれない……)」



そんな絵空事を考えた――その時だった。

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