好きよりも、キスをして
「(とりあえず、俺の事考えて目ぇ閉じろ)」
ドキッ
ぶっきらぼうで偉そうな言葉なのに、その強引さに少しだけときめいている自分もいる。
「夢の中では、流されないようにしよう……」
静之くんとメールをした事で少し落ち着いたのか。はたまた、メールをした事で静之くんが恋しくなったか……それはないか。
ともかく、私は目を閉じる。すると、ザワザワと暗闇の音が聞こえてくるようだった。
「(静之くんに、会いたい。会わなきゃ……)」
そう意気込んだ瞬間、またブザーが鳴る。三度目ともなれば、いくらビックリするような大きな音だって、聞き流せるようになってきた。
「待っててね、静之くん」
今日は全部、答えてもらうからね――
既に目は瞑っているのに、視界が暗転するのが分かる。体がどこかに引っ張られる感覚がある。昨日と同じ。
あぁ、静之くんに会える――なんとなく確信した私は、まるで安心したかのように、肩の力を抜くのだった。