好きよりも、キスをして
「泥棒みたいな事してんな。こっち来い」
グイッ
三歩目を歩いたところで、痺れを切らした静之くんに、腕を引っ張られる。
静之くんこそ、泥棒なんじゃない?いつ私の方へ歩いてきたか、全然分からなかった。
「まあ座れよ、ほいコーヒー。夢の中でコーヒーってのも変だけど」
「(いただきます……)」
ま、まさか。静之くんが作ってくれたコーヒーを、私が飲むことになろうとは……。申し訳ないのと有難いのと……やっぱり不思議な気分なのと……。
あぁ私、混ざっている――そう思った。
黒いコーヒーに垂らした白いミルクが、ぐにゃぐにゃと混ざっていく様子。それを見ると、私の感情と合致する。
今、私の感情は、こんな風に混ざっている。色んなことが、いろんな方向に。
分からないことが、多すぎるんだ――
「で、何から聞きたい?」
「!」
開口一番。
静之くんは、昨日と同じようにニヤリと笑って、私を見た。