好きよりも、キスをして
そんなことを思っていると、静之くんが「で?」と私に問いかける。同時に、音が軽くなったマグカップを、コツンとテーブルに置いた。
「さっき、何から聞きたい?って言ったけど……前言撤回。
お前さ、まず自己紹介してみろよ」
「(自己紹介?)」
なんで学校みたいな事をしないといけないの――心の中で悪態をついているのがバレたのか、静之くんは不機嫌な顔をした。
「いま全く喋らないお前が声を出せるか、テストしてんだよ。声が出なきゃ、聞きたいことも聞けねぇだろーが」
「(あぁ、なるほど……)」
「ま、例えここで声が出なくても、意地でも喋らすけどな」
「……」
優しいのか、優しくないのか。だけど静之くんって……見た目とは裏腹に、親切な人かもしれない。