好きよりも、キスをして
「夢の中にいられる時間って、決まっているの……?」
「決まってない。昨日みたいに一瞬の時もあれば、丸一日経ったか?って思うくらい、長い時もある。それぞれだ。基準は、俺にも分からねぇ」
「そう、なんだ……」
静之くんに聞けば、全部が分かると思っていた。けど、どうやら違うみたい。
あれ?じゃあ静之くんって……いつからここにいるの?
確か、昨日会った時は、
――「来ちまったんだな。お前が」
そう言っていた。それはまるで、誰が来るのか、ずっと待っていた人のセリフ。
静之くんは、誰かを待っていたのかと思ってた。ずっと前から――でも、違うのかな。
「静之くんは、いつから、この夢に来てるの?」
「……俺は」
「……」
私は静之くんを見る。だけど静之くんは……私の後ろにある、冷蔵庫を見ていた。
そして「グルル」と、軽快になる彼のお腹の音。それは静寂な部屋に、隅から隅へと響き渡る。