好きよりも、キスをして



「(しかも授業中にわざわざって……よっぽど早く伝えたかったのかな……好きっていう、気持ちを)」



いや、好きって……――自分で言って、自分で照れる。周りから見ると、一人で笑ってる怪しい人だ、絶対……。

だけど、今まで告白された事がない私からすると、告白されて浮かれない訳がない。



「(落ち着け、落ち着け……深呼吸……っ)」



心を落ち着けるために冷静を装ってみるけど……。意味なくシャーペンをノートに走らせてみたり、特に重要じゃない箇所をマーカーで引いたり。

あとで見返して「この日の私どうした?」って頭を抱える自分を、簡単に想像できる。



「(はぁ、何やってんだろ私……)」



ため息をついて、とりあえず視線を上げてみる。いつの間にか進んだ、黒板の先生の走り書き。そして静かな教室内――



「(あぁ、そうか)」



同じクラスの静之くんも、この空間の中にいるのだと、ふと思い出す。

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