好きよりも、キスをして

「静之くんに聞こうと思って、忘れないようにとメモしたけど……。

聞かなくて、本当に良かった」



だって、手のひらに書いた言葉。

それは、



――静之くんも私と同じ?



「サイテーな言葉だ……」



手のひらを隠すように、ギュッと手を握る。強く、強く。

その時に爪が皮膚に食い込んで、少しだけ痛んだ。やりすぎた。私はバカだ。



「もう、本当に……」



私は、大バカ者だ。



「静之くんは私と同じで……。喋りたくないから喋らないんだって、そう思ってた。

けど全然、違うじゃんか」



静之くんは、浅はかな自分と同じフィールドに立っていると勝手に思っていた私。

けど違う。静之くんは喋らないんじゃない。喋れないんだ。

その違いは、天と地ほどの差がある。



「はぁ〜……。静之くんにバカな質問をしなくて、本当に良かった……」



この時ばかりは、沼田くんに感謝した。

あの時、カンニングと疑われてウェットティッシュで消すことがなかったら、きっと私は夢の中で聞いてしまっていた。

静之くんに聞く前に、彼が喋れないと知れて、本当に良かった。

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