好きよりも、キスをして


突然、感謝を口にしたのがまずかったのかな。沼田くんはポカン……というよりは、慌てた顔をしていた。



「澤田、い、今、喋った?」

「(……コクン)」

「口で答えなよ!もう一回喋って」

「(フルフル)」



何が楽しくて沼田くんに二回もお礼を言わないといけないのか。私の横でギャーギャー騒ぐ沼田くんを放っておいて、窓際にいる静之くんをチラリと盗み見る。


すると静之くんも私を見ていたのか、バチッと目が合った。

そして、



「(よかったな)」

「!」



彼の口が、そう動いた気がした。


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