好きよりも、キスをして
「(学校で、話してくれた……)」
ビックリしていると、静之くんは視線を逸らす。そして再び、読書へ戻った。
「あ……」返事をし損ねた事に、罪悪感を覚える。せっかく話しかけてくれたのに。
だけど、静之くんも静之くんだ。
昨日は、
――また今日の晩。夢の中で。話はその時に
なんて、学校でわざわざメールを送ってきたくらいなのに。
あのメールはつまり「学校で俺と話すな」って、そういう事だよね?なのに今日は、いきなり話しかけてくれるなんて……変な人だ。
「(夢で会ったら、お礼を言おう)」
そう思った時の私は、少しだけ笑っていた。
だって、静之くんが夢だけじゃなくて現実でも私と関わろうとしてくれた事が嬉しくて。くすぐったくて。私の口角が、無意識のうちに上へと伸びる。
すると、そんな私を真横で見ていた沼田くん。普段なら間違いなく不気味がるだろう、ニヤけた私を見て……なぜだか固まっている。
「……?」
いつまでも見られているのが居心地悪くて、少しだけ眉間にシワを寄せた。
すると、
「謝ったり笑ったり…澤田、今日キモい。ネジ何本抜けてんの」
「……」
「無視とか。ウザ」と言われてもいい。今回の返事は見送ろうと、静かにスルーを決め込んだ。