好きよりも、キスをして

静かに闘志を燃やしていた、その時。


「あれ、静之くんはー?」と、渦中の人を探す女子がいた。可愛いくて美人なクラスのアイドル、枝垂坂桃(しだれざか もも)さんだ。

優しくて気が利く彼女は、いつどんな時も助っ人が現れる。今だって、一言「静之くんは?」と呟くだけで、周りのクラスメイトが「あー、静之くんね」と手を貸している。



「お昼の時はいつもいないよ。だからホラ、毎日、椅子を借りちゃってるんだ」

「あれ、本当だ。いないんだね。気づかなかったぁ。そろそろお昼休みも終わるし、戻ってくるかなぁ?」

「いつも予鈴が鳴って戻ってきてるよ」

「そっか、分かった。ありがとうね。助かったよぉ」



枝垂坂さんが微笑むと、助っ人もにこやかに笑みを返した。あぁ、いいなぁ。

ああいう枝垂坂さんみたいな人は、いつどんな時だって困ることがないんだろうな。恵まれてるなぁ、羨ましい。


そう思うと同時に、

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