好きよりも、キスをして
「ってか静之くんって、どんな人だったっけ?」と、今更ながら、告白してきてくれた子の顔を見たいと思った。
今は高校一年生の四月。
入学したばかり。覚えが悪い私は、名前と顔が一致していない人が多かった。静之くんも、その一人。
「(えーと、静之くんって確か……私と一緒で、一番後ろの席だったはず)」
最後尾の席という強みを活かして、授業中にも関わらず、大胆に視線を動かす。
静之くんは私と同じ一番後ろの席で、私と対になる場所にいた。私は廊下側。静之くんは窓側。
間に机が三つ入ると、必然と静之くんとの距離は遠くなって……。姿を見たいのに、よく見えない。
もどかしい気持ちを押し殺しながら、ゆっくりと椅子を後ろへ引いた。全ては、静之くんを見るために。