好きよりも、キスをして


「(え、また寝たの……?)」



不思議に思って暫く眺めるも、やっぱり寝ているようだった。うん、やっぱり沼田くんって、よく分からない……。


するとその時。


私の近くの扉から、静之くんが入ってきた。音もなく、スッ――と。いつか静之くんに「泥棒みたい」と言われた事があったけど、静之くんも素質がありそうだな。



「(どこ行ってたんだろう?)」



人目を気にすることなく、静之くんをじっと見つめる。

すると私の席から二、三歩――静之くんが遠のいたところで、少しだけ顔を動かして私を見た。

そして、



「(見んな)」

「!」



本日、二回目。

静之くんは、また、私に話しかけてくれたのだった――

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