好きよりも、キスをして


ブー



「今日の、あれ……なに?」

「あ?アレってなんだよ」

「話し……かけてくれたじゃん」

「……」



静之くんが学校で話しかけてくれた、その晩のこと――


ブザーの音が響いた後。

私は今日も、夢の中で静之くんと会っていた。私はソファに腰かけて、静之くんは地べたに座っている。

ソファなんて、今まであったっけ?と疑問に思ったけど、ここは夢の中だ。何かが降って湧こうが、突如として何かが消えようが、結局は夢だから気にならない。


だけど、静之くんが学校で話しかけてくれた事は別。

めちゃくちゃ気になる。考えたら眠れなくなるくらい。



「眠れなくなるくらいって……。現実の澤田が寝たから、こっち(夢)に来てんだろ」

「熟睡する前に飛ばされてるわけじゃないもん……」

「浅くても深くても、睡眠は睡眠だ。ちゃんと寝れてんだよ」



ハハと笑う静之くん。どうやら、私の質問ははぐらかす気らしい。




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