好きよりも、キスをして
恥ずかしさでワナワナ震える口では、思ったことも言い返せない。だからせめてもの抵抗で、キッと強く睨んだ。
だけど、静之くんにとっては、全く効果がなかった。
まるで泣きわめく赤ちゃんをあやすように「はいはい」と、私を簡単にソファに押し倒す。
ドサッ
「なッ!?」
「こーなるって、予想しなかった?」
私の耳元に顔を寄せて、囁くように言う静之くん。いつものぶっきらぼうな言い方ではなく、まるで本当に彼女にするような優しい言い方――
そんな静之くんを間近で感じ、私の体がどんどん熱を帯びる。
「ムリ……。何もしないって……、今から、約束して……!」
「何もしないって、お前なぁ」
静之くんが「はぁ」とため息をつく。そして、私の顔に出来る限り近づいてくる。
唇同士が当たらない、ギリギリの距離。彼の吐息を、目の前に感じた。