好きよりも、キスをして

その後は、散々だった。

私を襲いたい静之くんと、静之くんから逃げたい私と。


いや、私を襲いたいって……一体どんなギャグ?って思うけど。でも、あの時の静之くんは、確かに私を欲しているようだった。



『澤田、目ぇ瞑れよ』

『い、や……っ』

『まぁいっか。目はどっちでも。瞑らなくてもキス出来るって、お前だって知ってるよな?』

『ッ!』

『お前のファーストキス、俺が貰うから』



静之くんのカッコイイ顔を見ていると……。

時々、本当に物欲しそうに歪めた顔を見ると、思わず口走ってしまいそうになる。


イイよ――って。


だけど、それをしなかったのは……いや、出来なかったのは、



ブー



いつもの、ブザーの音。

それが鳴ったからだ。


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