好きよりも、キスをして



――静之くんが私に喋ってくれた言葉、ちゃんと聞こえたもん

――例え私がバカでも、静之くんが喋った事だけは否定しないで



俺より俺を知っているかのような口ぶりで、そんな事を言う澤田。反吐が出る。

今まで自分を粗末に扱ってきたのは、澤田、お前自身だろ?


声を出さずに一人静かに生きて来たお前。その姿は、うぜぇくらいに、俺の目に留まった。

だから、沼田との仲裁に入ったのも気まぐれだし、学校で話しかけたのも、何となくだ。


それなのに、どうしてだ。



――静之くんと付き合う。彼氏彼女になる



澤田なんでお前、そんな事いっちまうんだよ。

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