好きよりも、キスをして
表には出さなかったが、内心は盛大なため息が出た。
俺、お前のこと、実は嫌ってんだぞ?ずっとムカつくって思ってたんだぞ?
付き合おうって言ったのも、お前がどれだけ俺に忠実になってんのか試したかっただけだし。何の意味もねーんだよ。なのに、なんで了承してんだよ。
だから……澤田を突き放すために、俺は次の手に出た。
――お前のファーストキス、俺が貰うから
澤田はさすがに嫌だって言った。当たり前だ。そもそも、俺だっていらねーよ、お前の唇なんて。
澤田はクラスにいる静かな女子で、秀でた可愛さがあるわけでも、守ってあげたくなる可憐さがあるわけでもねぇ。
ばかりか、無言を貫くから「不気味な女」とまで噂されている(本人はたぶん知らない)。
そんな奴とキスしたいか?
いや。俺なら嫌だ。遠慮する。
……だけど、