好きよりも、キスをして
――ムリ……。何もしないって……、今から、約束して……!
恥ずかしさの中、必死に抵抗する澤田の事を、少しだけ「可愛い」と思ってしまった俺もいる。癪だけど。
俺はもしかして欲求不満で、その解消だけの目的で澤田と付き合っている?と思ったりもした。
だけど、それは違う。断じて違う、と思いたい。
欲求ならある。でも、性欲じゃねぇ。
それは――
澤田を屈服させたい。それだけ。
今まで「喋れるお前」を下から羨んで見ていた。けど、今度は俺が、上からお前を見下ろしたい。
下克上だ。
それが俺の欲求。
嫉妬心から来る、俺の願望――
「(悪く思うなよ、澤田)」
俺と澤田を繋いでいるのは、夢の世界と、彼氏彼女という肩書き、そして――嫉妬。
俺らの間に、愛なんて何もない。恋なんて、その辺に捨ててあっても拾わない。
きっとお互いがお互い、なんで付き合ったのか分かってねぇ。
けど、それでいい。