好きよりも、キスをして
澤田の事は気にしないと決心した後、自分の席に着いてぼんやりする。
暇だな――と思った時は、大体、読書をしている。といっても、誰とも話さないから大抵いつも暇なんだけど。
でも、今日は違った。
パタン
「……」
俺の横から、ノートが一冊降ってくる。でも、普通のノートじゃない。その青色のノートは、少し小ぶりだった。
「(……コレ、なに?)」
このノートを机に置いた奴――澤田を見る。澤田は音もなく俺の席の後ろに立ち、ノートを寄こしたらしい。
不審な顔で澤田を見ると、ニヤリと――何の悪だくみをしているんだと容易に分かる、含みのある笑みを彼女は浮かべていた。