好きよりも、キスをして

「ねえ、静之くん」

「?」



普段話しかけられることがないから、ビックリした。今日も静かに一日が終わると思った矢先の事だったから、余計だ。



「(俺に……話かけたよな?)」



あまりに突拍子もないことだったので、疑問を覚える。すると俺から何も返答がないのを不思議に思った枝垂坂が、申し訳なさそうに聞いてきた。



「あ、ごめん。あの、静之くんって、耳は聞こえるんだよね?」

「(うん)」

「そっか、良かった。何も反応がなかったから聞こえないのかと思って」



眉を下げて申し訳なさそうにする枝垂坂。

薄茶色のロングの髪は、いかにもモテる女子って感じだ。小さな顔、枝垂坂に似合った体のライン。全てが完璧。


それに比べて澤田は……って。やめやめ。

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