好きよりも、キスをして


「(何こんな時にまで澤田の事を考えてんだ、俺)」



あのノートを貰ってから、澤田の事を妙に考えてしまう。ダメだな。さっさと燃やしてしまうか、あんな不吉なノートは。


そう考える俺の心とは裏腹に、ノートは大事にカバンの中にしまってある。


夢の中で渡すのはさすがに無理か?なら、明日の朝一に教室に来て、アイツの机の中に入れとくか――そんな事まで考えている自分が笑えて来る。


几帳面とかじゃない。俺はもともとガサツなタイプだ。夢の中の俺を見たら、百人が百人、そう言うだろうな。

けど、そんな俺がノートを澤田に返そうと、律儀に思ってるのが滑稽だ。


だって、そんなの、



「(また澤田からノートが来るのを、楽しみに待ってるみたいじゃねーか)」



今度は澤田が何て書くか――そんな事を楽しみにしている俺がいるなんて、認めたくねぇ。



「(やっぱダメだ。こんな俺は俺じゃねぇ。

あのノートは燃やす。決めた)」


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