好きよりも、キスをして

「静之くん、前々からカッコいいって思ってたんだよね。それで、今日授業中に笑ってるところ見たの。

その顔が頭から離れなくて……。なんかいつもと違う笑顔っていうか。優しい笑顔にキュンってしたってゆーか!

だからね、もう運命かなってね。協力してもらうなら、静之くんしかいないって思ったの」

「(いや、俺は……)」

「それに、ホラ。静之くん喋れないから、ちょうどいいよね?

うっかり口が滑って本当の事を言っちゃうって事もないし。私さえ上手く回せば、絶対元カレのこと騙せるかなって!」

「……」



こういう事を平気で言う人種は一定数いる。存在する。散在する。野放しになっている。

人の心に土足に踏み込み、荒らした事にも気づかないまま、去って行く。


嫌な奴だ。


二度と関わりたくない。


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