好きよりも、キスをして
「(って思ってるのに……どうして俺も、ここから動かねーんだろうな)」
足が地面から離れない。本当なら、ここで反論したい。こんな奴、放っておいて帰ってやりたい。
が――相手は枝垂坂だ。皆が好きこのんでコイツに集まる、言わば人気者だ。
人気者に反論すると、今以上に教室で肩身が狭くなるだろうし。
ただでさえ「喋れない奴」ってだけで、腫れ物扱いをされてるのに。
「(これ以上、教室から浮きたくねぇし。単純にめんどくせぇ)」
クラスで円満に過ごしたいがために、何を言われても従順になる俺。プライドを犬にでも食わせたような、そんな体たらくな姿。
「(情けねーな、ほんとに)」