惑溺幼馴染の拗らせた求愛

 沈黙に耐えかねた明音が口を開きかけたその時、家の中からドタバタと大きな物音がした。

「何?今の……」

 二人は互いに顔を見合わせた。不審に思い目を凝らすと、縁側から誰かが走り去っていくのが見えた。影は大柄で栞里とは似ても似つかない。

「大変っ!!」
「麻里!!」

 麻里は家の外側から慌てて縁側と向かった。

「なにこれ……」

 縁側越しに居間の惨状を目撃し、麻里は絶句した。鍵をこじ開けるためだろうか。ガラスが割られ、放射線上にひび割れていた。箪笥の引き出しは全て開けられ、中身をひっくり返されている。押入れにしまってあった衣装ケースも同様の有様だった。

 明音は直ぐに警察を呼んだ。パトカーが到着し、現場検証に立ち合っている最中に知らせを聞いた栞里とジローが飛んできた。

「麻里!!」
「お姉ちゃん……」
「良かった……。二人とも怪我はないわよね?」
「はい。泥棒は俺達が来た途端一目散に逃げ出したので」
「明音くん、麻里に付き添ってくれて本当にありがとう」

 現場検証の結果、金庫の中にあった権利書と通帳は無事だったが、戸棚に置いてあった三万円の入った封筒と母の形見のジュエリーがいくつかなくなっていた。
 幸いなことに被害があったのは居間だけだった。二階にある栞里と麻里の私室が無事だったのは物色する前に麻里が帰宅してきたからだろう。

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