惑溺幼馴染の拗らせた求愛

「泥棒が入った家にひとりで残せるわけないでしょう!?」
「一人で残ったとして泥棒を撃退できるわけないだろ!?もう一回よく考えろ!!」

 そんなに怒らなくても……。
 二人の勢いに気圧されそうになるが、麻里にだって言い分はある。

「でも……。今回は金庫の中身無事だったけど、次はそうとも限らないじゃん……。ほら、警察の人も巡回を増やすと言ってくれたし……」

「あのなあ……不審者が全員金銭目的とは限らないんだぞ。この家が若い女性の二人暮らしだってことは少し調べればすぐわかる」

 暴行目的もあり得たと示唆され、麻里の表情が一気に強張る。

「それでもどうしても残りたいなら俺もこの家で寝泊まりするからな」
「はあ!?勝手に決めないでよ!!」
「勝手なのはどっちだ!!」
「二人ともいい加減にして!!」

 栞里の一喝で二人の醜い言い争いはピタリと止まった。

「頼むから……今日は大人しく俺のところに泊まってくれ」
「明音のところ?」
「一人暮らし用の部屋に三人もいたら流石に狭いだろう?俺のところなら部屋も余ってるし」
「麻里、そうしてもらいなさい」
「お姉ちゃん!?」
「明音くん、約束覚えてるよね?」
「はい」
「麻里のこと、お願いね」

 方針が決まると最低限の荷物だけを持ち、住み慣れた我が家を出ていくことになった。
 支度に手間取った麻里が家を出る頃には、栞里とジローはいなくなっていた。

「ところで、明音は今どこに住んでるの?」
「……あそこの一番上」
 
 明音は空高く聳え立つビルを指差した。
 それは間違いなく槙島スカイタワーだった。

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