惑溺幼馴染の拗らせた求愛

「今日はここで寝ろよ。寝たくなったらそのまま寝ていいから。俺は仕事する」
「こんな夜中まで?」
「明日の分を今片付けてる」

 寝やすいようにと部屋の照明が落とされていく。デスクライトだけが辺りを照らす。
 お言葉に甘えてダークグレーのシーツに身体を埋めると、まるで明音に抱きしめられているような錯覚に陥った。

「ねえ、約束って何の話?」
「二度目のプロポーズを断られてすぐの頃だな。麻里が本気で嫌がるようなことをしたら即出禁にすると言われた」
「約束したの?」
「あのなあ、栞里さんを本気で怒らせると怖いって知ってるだろ?」

 普段は温厚で大人しい性格の栞里だが、やると決めたことはやり通す芯の強さがある。栞里が出禁にすると言ったら本当に出禁にされるだろう。

「もう寝ろよ。色々あって疲れてるだろ」

 麻里は素直に頷いた。目を瞑るとゆるゆると眠気が訪れてきた。
 麻里はその夜、明音の叩くキーボードの音を子守唄代わりにして眠りについた。
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