惑溺幼馴染の拗らせた求愛

 居間に戻ってくると、明音は仏壇に線香をあげているところだった。生きている栞里だけでなく亡くなった両親にも敬意を払ってくれるのは素直に嬉しかった。

「いつまでいる気?」
「泥棒が捕まるまで……と言いたいところだが、それは警察の捜査力次第になる。栞里さんとも相談して、警備会社と契約することにした。自動通報装置の設置工事が終わるまではここにいる」
「お姉ちゃんをよく説得できたね?」

 警備会社と契約なんていくらするんだろう。ガラスの修理代だって手痛い出費だというのに、この家のどこにそんなお金があるというのだろう。

「契約しなかったらずっと居座ってやると言ったら快く了承してくれた」
「押し売りじゃないんだから……」
「俺から提案した以上、費用はこちらが持つんだから押し売りでもなんでもないだろう?」
「うっそ……。明音が払うの!?」
「二人の安全に比べたら安いもんだ」

 なぜ我が家の警備会社の契約料を明音が払うかと呆れてしまう。と同時によく栞里が了承したものだと不思議に思う。

「さ、今日は飯食って早めに寝るか。明日から店を再開するんだろ」
「うん。その予定」

 そうそう落ち込んでばかりもいられない。休んだらその分は働いて取り戻すしかないのだ。
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