惑溺幼馴染の拗らせた求愛
こうして、奇妙な同居生活が始まった。
同居生活が始まり数日経ってみると、明音がいて助かった部分もある。店にいる昼間はともかく、夜になり外が暗くなってくると一人で家にいるのは精神的に辛いものがあった。野良猫の鳴き声、隣家の物音、そのひとつひとつに敏感になってしまっていた。
明音は閉店時間である十八時には帰宅するように仕事を調整してくれた。これは大変ありがたかった。見知った人、それも男性が家の中にいる安心感はやはり違うものがあった。
「あー疲れた。コタツ最高」
帰宅しスーツから部屋着に着替えた明音はリラックスした様子でコタツに身体を埋めた。明音はこの生活に驚くほど馴染んでいた。
「みかんも食べる?」
「コタツでみかん食べるなんて初めてだ」
「槙島さんちにはコタツはないの?」
「さあ?見たことない」
明音は居間に置いているコタツが大層気に入ったようで、寝る時以外はもっぱら居間で過ごしていた。
それならばと夕飯はコタツから出なくても作れるものにした。ホットプレートを卓上に置いて作るキャベツたっぷりのお好み焼きだ。
明音はお好み焼きを自分で作るのも初めてだったのか、楽しそうに裏表をひっくり返していた。お好み焼きが焼きあがるとかぶりついていく。