惑溺幼馴染の拗らせた求愛

「明音くんとは上手くやってるの?」
「まあまあだよ」
 
 麻里はそう答えながら出来上がったサンドウィッチをショーケースに並べていった。
 生まれてからずっと同じ家に寝起きしていた姉妹だが、この度初めて別々に暮らすことになったので互いの様子が気になって仕方ないのだ。
 
「お姉ちゃんこそジローさんとどうなの?」
「うん。最初はどうなるかと思ったけど上手くやってるよ。ジローさん、意外と綺麗好きなんだよ」

 栞里は床を掃きながら答えた。
 栞里はジローの家に泊まりに行ったきり一度も帰ってきていない。疑似同棲生活をすっかり楽しんでいるようだ。
 もし栞里とジローが結婚したら、自動的に麻里はあの家に一人きりで残されることになる。この調子だとエックスデーはそう遠い未来の話でもなさそうだ。

「もう帰ってきてもいいんだよ?明音もいるし、安心でしょ?」
「麻里ってば寂しいの?」
「そういうわけじゃ……」

 栞里はふふんと得意げに麻里をからかった。まるでこちらが姉離れできていないみたいではないか。

「私だって寂しかったわよ。麻里に嘘をつかれて、ジローさんとの食事会を断られて」

 心当たりがありすぎで麻里はギクリと肩を震わせた。明音と食事に行くからと、口から出まかせを言ったことがバレている。
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