惑溺幼馴染の拗らせた求愛
「お姉ちゃん……それは……」
「あんまりにも寂しいから、明音くんに協力することにしました。工事が終わるまでに彼とどうなりたいのか真剣に考えなさい」
「真剣に考えろって言われても……」
麻里はモゴモゴと口籠った。確かに最近はおざなりな返事しかしていなかったような気もする。
「明音くんはふざけてプロポーズするような人ではないでしょう?私との約束も守ってくれているようだし。つまり、あなたがキチンとお返事しないからややこしいことになっているのよ。明音くんが麻里の返事に納得するまで家には帰りませんから」
「わかった、わかったよ!!」
これでもかと捲したてる栞里を慌てて制する。こうなってしまっては説得しようとしても無駄だ。麻里は栞里を家に戻すのを一旦諦め、開店準備に専念した。
サンドウィッチを並べ終わり、値札を整え、SNSに告知をしたら準備万端だ。本日も無事十一時の開店時間を迎える。
いつもは開店しても十五分ほどは誰も来ないが、この日は珍しく開店と同時に客が飛び込んでくる。
「はあーい。お邪魔しますねー」
底抜けに明るい声がレジカウンターどころか調理場まで聞こえてきて、麻里は店頭に向かった。
「いらっしゃい。珍しいね、鈴菜が買いに来るなんて」
「先週末泥棒に入られたって聞いてさー。大丈夫だったの?」
鈴菜はレジカウンターに肘をつき、麻里に合図を送った。
鈴菜は麻里の幼馴染であり、生まれた産院まで一緒の友人だ。小中高とつるんできた悪友とも言える存在だ。