惑溺幼馴染の拗らせた求愛

 散々飲み食いした後、二人に送ってもらい家に帰ると明音がコタツで寝ていた。座布団を抱きかかえうつ伏せになって惰眠を貪るその様は、麻里にも身に覚えがある。ちょっと休憩のつもりで横になったが最後、コタツの誘惑に負けたに違いない。

 無防備に寝顔まで晒しちゃって、まあ……。

 麻里は明音の寝顔をじいっと見つめた。
 すっかり変わってしまったと思っていたが、子供の頃の面影もわずかに残っている。
 こめかみに薄ら残る二センチほどの傷跡は、木登りの際に枝に引っかけて出来たものだ。

 懐かしいな……。

 明音は高学年になると俄にモテ始めた。小学生にとって格好良い男子の基準は頭の賢さか運動神経の良さだ。低学年の時はヒョロくて身長も低かった明音だが、高学年になると百六十センチ近くまで一気に身長が伸びた。
 元々の賢さと育ちの良さに高身長という魅力が加わった結果、明音は運動神経だけは抜群の鷹也と女子の人気を二分するようになった。
 互いに対抗心を燃やす二人はある日木登りで対決し、傷だらけになりながらも先に頂上に到達した明音が勝利を収めたのだった。
 回想を終えた麻里は明音の身体を揺すった。

「明音、起きて。このまま寝たら風邪引くよ」
「ん……寝てた……か……?」
「そんなにコタツが気に入ったなら自分の部屋にも置いたら?」
「コタツなんて置いたら余計に仕事しなくなるだろ」

 麻里は卓の上に散らばった書類とノートパソコンにチラリと目をやった。

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