惑溺幼馴染の拗らせた求愛

 鷹也の運転するミニバンは高速道路を北へと進んでいった。
 途中何度か言い争いはあったものの、ドライバーに配慮した正確なナビと、安定した運転技術のコンビネーションのおかげで、無事にキャンプ場に辿り着くことができた。
 山の麓にあるキャンプ場は子連れと若者で賑わっていた。紅葉の終わりかけ、雪が降る前の最後のキャンプシーズンとあって、あちこちから楽しそうな声が聞こえてくる。
 鷹也は受付で指定されたサイトに車を停車させると、トランクからテントとシェードを出しテキパキと組み立てて行った。一切無駄のない動きと的確な指示はまさに神業だ。作業開始からものの十五分で設営が終わる。

「ほら」
 
 鷹也は着火剤と薪を明音に渡した。

「どっちが先に火を起こせるか競争な。負けたらあとで受付の売店でジュース買ってこい」
「……受けて立つ」

 あからさまな安い挑発に乗っかると、二人は猛然と火起こしを始めた。

「よくやるわ……」
「同感。男っていくつになっても馬鹿だね……」

 肉と野菜の準備をしていた女性陣はすっかり白けていた。正直に言えば、火がつきさえすれば勝敗なんて心底どうでもいい。
 結果は、大差をつけた鷹也の勝ちだった。最初から明音が勝てる勝算はなかった出来レースだったので当然だろう。アウトドア初心者の明音が、ソロキャンプもファミリーキャンプもお手の物の生粋のキャンパーである鷹也に適うはずがない。

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