惑溺幼馴染の拗らせた求愛
明音の姿が見えなくなったところで、麻里は薪を焚べていた鷹也に苦言を呈した。
「ねえ、その態度もうちょっとどうにかできないの?」
友情のハグをしろとまでは言わないが、なんでも喧嘩腰で話しかけるのはやめて欲しい。
「は?別に普通だろ。むしろ過去一で仲良くしてる」
「そうそう、本当に嫌っていたらそもそも車にも乗せないでしょ」
これには鈴菜も同調した。
「でも、結構意外だったね。槙島くんが火起こし競争に乗ってくるなんて。子供っぽいところがあるんだね」
「あいつは昔からそうだぞ。とんでもなく負けず嫌い。絶対に蹴散らしてやるって顔に書いてある」
鷹也はクックックとさもおかしそうに笑った。本気で嫌悪感を抱いているわけでもなさそうで安心する。
「そういえば、槙島くん全然戻ってこないね?」
すぐ戻ると言っていたのに三十分経っても明音が帰って来る気配がない。もしかしたら、迷ったのかも。麻里と鈴菜はこのキャンプ場には何回も来たことがあるが、明音は初めてに違いない。心配になってきた麻里はチェアから立ち上がった。
「ちょっと見てくる」
サイトから受付棟までは一本道だ。しかし、麻里が受付棟に向かう途中に明音とすれ違うことはなかった。受付棟に併設されている売店まで行ってみたが、そこにも明音の姿はない。