惑溺幼馴染の拗らせた求愛
「……麻里って結構酷いよな」
「え!?」
「曲がりなりにもプロポーズしてきた相手に大事な仲間って台詞はないんじゃないか?」
「え、あ、ごめん……」
「いや、大丈夫。元気出てきた。俺は麻里のそういう所に惚れてんだった」
ポンポンと頭を優しく撫でる明音と目が合う。その刹那、唇同士が重なった。一瞬のことで麻里は何が起こったのかよく分からなくなった。
キスをされたのだと認識したのは、数秒が経ってからだった。
「どう?少しくらい男として意識した?」
「どうって言われても……。わかんない……」
「なら、わかるまでしないとな」
明音はなぜか嬉しそうに笑い、麻里の顎を掬いもう一度キスをした。今度は一瞬よりも遥かに長い。
明音の唇が、麻里の唇を何度も掠めとっていく。舐めて吸われて、甘噛みされて。愛撫と見分けのつかない口づけは麻里の心を奪い尽くしていった。
「何かわかった?」
麻里は明音に身体を預けると口元を手で押さえ肩で息をした。とても感想を言えるような状態ではなかった。
「あーー!!あんなところにいたーー!!」
「そろそろ片付け始めるぞ!!」
いつまでも戻ってこないことに痺れを切らしたのか、サイトに残っていたはずの鈴菜と鷹也が探しにやってきた。
「今から戻るーー!!」
明音は二人に向かって声を張り上げた。
「戻れるか?」
そう尋ねられて麻里は無言で頷いた。
キスが互いの好意の下に行われる親密な行為なら、麻里達はもうただの幼馴染とは言えなくなってしまった。