惑溺幼馴染の拗らせた求愛
「それで、縁談の話を聞いた麻里はどうしたいんだ?」
誤魔化しが効かないと悟ると、明音は開き直った。縁談の話をわざと伏せていたのは明らかだった。
麻里は深く息を吸い、同じだけ吐き出した。どうしたいかよりも、どうするべきか。心は既に決まっていた。
「この家から出て行ってくれる?他の女性と結婚する人を、この家には上げられない」
麻里に出来るのは明音ときっぱり縁を切ることぐらい。門出を祝う気分になれないのはどうか許して欲しい。
「そうか。弁解をする機会すら……与えてくれないんだな」
明音は寂しそうに笑うと麻里の手首を掴み、壁際に追い詰めた。鼻先が触れ合いそうな程の距離で見つめ合う。
「俺からのプロポーズは本気で取り合わないくせに、他人の言うことは信じるんだな」
縁談のことを黙っていたのは明音の方なのに、なぜかこちらが責められているような気持ちにさせられる。
「何度もプロポーズしたけど、俺は全部本気だったよ。一生傍にいて欲しいと思う女性は麻里だけだ」
拘束されていた手首が解放され、代わりに指が絡められていく。握られる手の強さに明音の覚悟を感じた。