惑溺幼馴染の拗らせた求愛
そもそもどんな顔をして明音に会えばいいのだろう。今まで単なる幼馴染としてしか認識してこなかったのに、まともに会話が出来るのか?
自覚がなかったとはいえ、明音から九回もプロポーズされていて、好きも愛してるも言ってもらっている上にキスまでしちゃっているわけで……。
麻里の身体が茹でダコのように真っ赤に染まっていく。
私ってば……。なんてもったいないことを……。
後悔先に立たずとは、まさにこのことだ。今、同じことをされたら麻里は間違いなく腰を抜かすだろう。腰を抜かした上で、なんなら喜んで身を任せるだろう。
ここでふと一抹の不安が胸をよぎる。
好きだと伝える以前の問題として、明音はまだ麻里のことを想ってくれているだろうか。
明音の言い分も聞かずに酷い言葉を吐いた麻里を許してくれるだろうか。
麻里の表情が翳ったその時、玄関のインターホンが鳴った。
「はーい!!今行きまーす!!」
麻里はコタツから飛び出し、勢いよく玄関の戸を開けた。
玄関の立っていたのは明音でもなければ工事業者でもなかった。
「沢渡麻里さんですね。我々と一緒に来て頂けますか?」
ダークグレーの立派なスーツを着た二人組は有無を言わさず麻里を沢渡家から連れ出したのだった。