惑溺幼馴染の拗らせた求愛
まったくもう……。
油断するとすぐこれだ。二人きりの家の中で節度を保つのに麻里がどれだけ苦心しているか、明音は知らない。
服を脱ぎ髪と身体を洗い湯船に浸かると、入口に背を向け、入ってもいいと伝える。
「自分の家の湯船でタオル巻くなよ」
「……ほっといて」
背中越しでも不服そうな明音の表情が手に取るようにわかる。乳白色の入浴剤と身体に巻かれたタオルが相当お気に召さないご様子。でも、こうでもしないと恥ずかしくって狭い湯船で二人きりになんてなれやしない。
「麻里」
身体を洗い終えた明音の声が風呂場に反響する。名前が呼ばれただけで、背中がゾクリと泡立った。ピチャリと鳴った水音で、明音が湯船に身体を入れたのだとわかる。
「二人だとやっぱり狭いな」
無防備なうなじに吐息があたり、ビクンと身体が跳ねてしまう。
「なあ、こっち向いて」
タオルの合わせ目を握りしめながら振り返ると、直ぐにキスが降ってきた。
「こんなことばかりしてたらのぼせちゃうよ……」
「その時は俺が看病するさ」
明音は嬉々としてタオルを解き、灯りの元に晒された滑らかな肌を思う存分堪能した。不満を訴えても、決してやめるとは言ってくれない。明音の行動に流される麻里も同罪だ。
明音の全てが好きだ。
堰を切ったように溢れ出した想いはどうやっても止められない。あれほど思い悩んでいた格差など大したことではないように思えてくる。抱き合っている時に感じる体温も胸の鼓動も自分のものと何ら違うところはない。