惑溺幼馴染の拗らせた求愛
風呂場でコトに及ぶのはさすがにまずいと場所をベッドに移したが、二人の夜は終わる気配がない。衣擦れの音と互いの吐息が静かな夜に溶けていく。
抱き合えば抱き合うほどに離れ難く、想いが深くなっていく。それは明音も同じのようだった。
「ねえ、いつから私のことが好きだったの?」
明音に髪をすいてもらいながら、ピロートーク代わりに尋ねてみる。
「気になる?」
「いいじゃん。教えてよ……」
麻里が明音について知っているのは同じ小学校に通った六年間のことだけだ。離れている間にどういった心境の変化があったのかどうしても知りたくなる。
「今思えば……麻里を女性として初めて意識したのは中学二年生のあの時だな。知らない男と歩いてるのをたまたま見かけた」
私立中学に通っていた明音と、公立中学に通う麻里では通学時間が全く異なる。通学途中に一度も遭遇したことがなかったが、明音は違ったようだ。
「どうして隣を歩いているのが俺じゃないんだろうって凄く悔しかった。あれだけ嫉妬したのは後にも先にも一度だけだな」
麻里が思うよりもずっと前から明音の気持ちが自分に向いていて、とてつもなく嬉しくなる。
「麻里は?」
「うーん……わかんない。わかんないけど……好き、だよ?」
「あーもう。本当に敵わないなあ……」
額をコツンとくっつけたまま、再びマットレスに押し倒されていく。明音のスイッチがどこにあるのかわからない。手の施しようがないほどに壊れているのかもしれない。
好き合う男女が同じ家に暮らせば、自ずと蜜月が始まる。麻里は明音から溢れんばかりの愛を注がれ、ゆっくりと恋の谷底へと堕ちていった。決して怖くはない。隣には明音がいたから。二人でならどこまでも堕ちて行ける。そう思っていた。