惑溺幼馴染の拗らせた求愛
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明音を会社に帰らせバックヤードから戻ってくると、栞里と彼氏のジローがイートイン用のスペースで楽しそうに話をしていた。
ひと月ほど前に付き合い出した二人の甘い雰囲気は、今の麻里の目には毒だった。
ジローは元々SAWATARIの常連客だったが、なんやかんやあって今では栞里の彼氏に収まった。一見するとぶっきらぼうで粗野にも思えるが、栞里のことを大切にしていることは傍目にも明らかだ。
栞里は気後れしているが実はジローの方がメロメロなのだ。
いいよなあ……。
長らく彼氏と呼べる存在と縁遠くなっていた麻里は思わず羨望のため息をついた。
明音には今は結婚なんて考えられないと言ったが、仲睦まじい栞里とジローを見ていると愛し愛される関係も悪くないと思えてくる。
もちろん、麻里とて恋愛経験が全くのゼロというわけではない。高校生の時だって専門学校に通っている時だって彼氏はいた。しかし、いずれも友達の延長のようなもので他の女性に嫉妬したり、身を持ち崩すようなことはなかった。
恋愛に本気になれないのは生来の性格のせいなのか。それともただ単に恋愛の何たるかを知らないだけなのか。
麻里にはまだわからなかった。