冷徹パイロットは極秘の契約妻を容赦ない愛でとろとろにする
「えっ、えええええええええ――――!?」
人目もはばからず大きな声を上げると、伊織さんは困った表情でしっと人差し指を顔の前で立てた。
「ご、ごめんなさい。まったく予想してなかったので」
「だよね、徹底して隠していたから」
そう言って伊織さんは「バレると色々と面倒なことが起きるから」とボソッと付け足した。
きっと駆さんと私と同じ理由だろうと察する。
(菅原チーフは駆さんと仲がいいんじゃないの? だってこの前も一緒に食事も行っていたし)
運ばれてきた食事には目もくれず、ぐるぐると頭の中で色んなことを考える。
伊織さんも苦笑いで非常に気まずそうな様子だ。
「驚かせてごめんね。でも俺たちが結婚したら安奈ちゃんも有紗も家族になるんだし、先に伝えておきたくて」
「な、なるほどです。でも……おめでとうございます!」
「ありがとう」
少し冷静になり祝福の言葉を贈る。
推しが結婚するなんて推しの口から伝えられたら、普通ショックで倒れる案件だ。
ここまでノーダメージということは、私の推し活は完全に卒業ということになる。
「実は最初、駆が強引に安奈ちゃんに結婚を迫ったんじゃないかと思って心配してた」