冷徹パイロットは極秘の契約妻を容赦ない愛でとろとろにする

込み上げてきたモヤモヤとした感情に、唇を噛みしめる。
駆さんから契約結婚の話を持ち掛けられたとき、ご両親からの結婚の圧と女性からのアプローチを回避するためと理由を聞いていた。
やけに必死だった駆さんの姿を思い出す。

(相当困り果ているのだとばかり思っていたけれど、本当は別の理由があったのかな)

伊織さんへの対抗心で結婚したかった。しかも菅原チーフのことを想っていたらなおさらだろう。
彼女とは熱愛の噂が立っていたり、私と結婚してからも一緒に食事に行ったり、普段からもとても仲がいい。

モヤモヤとした感情が形を変えて、胸をえぐる痛みに変わっていく。

本当は形だけで結婚したからこそ、伊織さんの憶測は信ぴょう性がある。
駆さんの好きな人は、いったい誰なんだろう。

(キス……したけど、私のこと好きとは限らないよね)

最近は接し方が変わったけれど、今まではむしろ嫌われているぐらい冷たかった。
菅原チーフに想いがあって出来心でキスしたとしても、納得がいく。

「安奈ちゃん?」
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